東芝メディカルをキャノンが買収してどうなるのか。この先の見通し。
東芝メディカルについて
- 東芝メディカルは東芝グループで唯一黒字の会社
- 日本での大型医療機器のシェアが高い
- その中でもCT,超音波検査(エコー)は日本の中ではわりとダントツに一位(理由はとにかく安いからとされています。高い所シーメンスとかのヘタすると半分くらい)
- 世界でもそこそこ上位ですよ(CTとかMRIとかの高額医療機器は日本が圧倒的に普及しているからってのが大きい)
- その他に放射線治療機器とか、PETとか、電子カルテ、システム周りもろもろ。まあいろいろ医療機器はほぼ全て網羅してるって思ってokです
- 買収額はおよそ7000億円。純利益はおよそ160億。
買収を希望していた有力な2つの企業
富士フィルム
まず第一候補として富士フィルムが上げられていました。
富士フィルムは医療機器としては、一般撮影装置(いわゆるレントゲン)撮影で使われるIP(イメージングプレート、フィルムのようなものですね)で圧倒的なシェアを持っています。
イメージングプレートについては検索していただくのがよろしいかと。
簡単にいいますと、X線を光に変えて、それを蓄えるデジタルなフィルムだと思って頂くとよろしいかと。
繰り返して使える所もいわゆるフィルムとは違う所ですね。
今までアナログのフィルムだったわけですが、フジが1981年にFCR(フジコンピューテッドラジオグラフィー)という名前で、今のデジタルカメラのようなシステムを作ったわけですね。
それにより、従来の写真ような、暗室で現像液につけて現像するような作業がいらなくなり、プリンターのようなモノで撮影できるようになりました。
もちろん富士フィルムというくらいですから、フィルムでも強かったわけですが、自分で作ったシステムにより、フィルムは減少をたどっていきます。
最近では、PACSのシステムとしてSynapse(医療画像をパソコンで見る奴です。国が医療費を減らすために、導入を勧めました。保険点数がフィルムで見るより増えるメリットがあります)、ワークステーションvincentを売り出してたりします(CTとかの画像を3次元的に見えるようにする為によく使われます。)
写真はAZEさんから引用しました。
ワークステーションを利用することでこんな画像が作れたりします。
またFPD(フラットパネルディテクタ)という、IP(イメージングプレート)の進化版のようなものを作っておりまして、それでも高いシェアを持っています。
FPDは液晶ディスプレイとは違いまして、IPの進化版のようなものです。
FPDの特徴は、X線検出器が沢山並べられた薄い板なわけですが。
http://fujifilm.jp/business/healthcare/digital_xray_imaging/dr/calneo_s_c47/index.html
フィルムのようなものでして、イメージングプレートを使う場合に比べると、圧倒的に早く画像を表示させる事ができるメリットがあります。
また、読み取らせる機械が必要ない事もメリットですね。
最近比較的医療業界のトピックスになっている機械です。
写真は富士フィルムさんから
こんな機械ですね。
キャノン
キャノンで医療機器を知っている方というのは中々コアな方。
カメラとかプリンタとかのイメージが強いと思います。
キャノンは、フラットパネルディテクタ(FPD)を医療機器として作っております。
またPACSも作っています。
また最近ではAZEというワークステーションを作っているメーカーを傘下に入れました。
しかし、正直な所キャノンのフラットパネルはあまり売れておらず、島津とか一部が採用してるくらいでした。
圧倒的にフジや、コニカミノルタに負けているというのが現状でした。
それぞれの思惑
富士フィルムの思惑
富士フィルムとしては、東芝メディカルさんが作っている、一般撮影部門、CT部門、MRI部門、などは欲しかったはずです。
というのも、一緒にPACSを売り込める、ワークステーションを売り込みやすいという事です。
また富士フィルムは一般撮影装置をそれほど作っておらず、シェアが高くありませんでした。(使われてる道具のシェアは圧倒的なんですが)
そこで、東芝メディカルが作っている一般撮影装置、また、病棟で動けない方を撮影するポータブル撮影装置は欲しかったはずです。
一緒にFPDを売り込めますからね。
FPDは一枚今は600万円くらいでしょうか。(ちょい前は1千万)
PACSとワークステーションは規模にもよりますが、数百万
CT,MRIは1-2億をイメージすればよろしいかと。
キャノンの思惑
キャノンもやはり、富士フィルムと同じで、PACSやワークステーションを売り込みたいというのが一つ大きいと思います。
ただキャノンがフジと違う所が、圧倒的にFPDが売れていないと言う事です。
(PACSとかAZEとかのワークステーションもあんまり売れてない)
もしキャノンが、東芝メディカルを買収すれば、東芝さんのレントゲン装置やポータブル撮影装置と一緒に、今までさほど売れてなかった、FPDを売ることができます。
X線透視装置(バリウム撮影するやつをイメージしてください)にもつけることができますので、今までさほど売れていなかったキャノンのFPDやPACS、ワークステーションが売れるようになるのでは、とおもわれています。
そこで、今まで日本ではフジが圧倒的だった所に割って入れるのではとの考えがあると考えられています。
で、どーなんの?
東芝の装置を入れている病院さんが、継続してまた東芝を使おうという確率は比較的高いとおもわれます。ですから、そこは当然にシェアを伸ばせます。
またCT装置と一緒にワークステーションを売れる確率も比較的高いと思われます。
AZEさんはその手のワークステーションでは、比較的評判がよろしく、(売上はさほど芳しくないですが)、東芝の装置を入れた所がキャノンのワークステーションを入れる事が増えていき、富士フィルムのワークステーションを入れる確率は少なくなっていくとおもわれます。
富士フィルムのVINCENTは、評判が非常によろしいらしいですが、恐らく価格の面で、トータルのパッケージで売ってる所には勝てないと思いますので。
また、一般撮影装置も東芝を入れる所はキャノンのフラットパネルを使うことになりますので、またここでもシェアをとられるのではと予想されます。
特に今はFPDがはやりの時代でして、入れ替えシーズンとされています。ここでも売上は大きく伸ばせるのではと思います。
ですから、東芝をキャノンが買収すると決まった時に、「おいおい待ってくれよ」とストップをかけたとかかけなかったとか。
で実際どうなるのかというと、キャノンは間違いなく医療業界での立場を上げていくでしょう。
ただフジは、うまいですからねえ。
いろいろ多角的な経営をして、リスク分散してますし、フジは結局フジで対して変わらないのかなって思ってます。
キャノンにとってこの買収額がどれほど負担になるのかどうか。
単純に東芝メディカルだけの利益だと、ペイするのは難しいように思えます。
自社の製品をどれだけ売り込めるかが注目ですな。
キャノンの医療機器部門は正直な所全部奮ってなかったわけですから、ここから売上を伸ばすことは期待できます。
私は、キャノンにはちょいと負担がおもすぎ無いかなって思ってます。
果たして無事に利益を上げる事ができるのだろうか。
ちょいと難しいような気がするんですねえ。
セットで売れば必ず売れるようなモノではないですし。
使われてなかったのはそれなりの理由があるわけですし。
フジもフラットパネルやワークステーションでのシェアを奪われる事は恐らく間違いないですが、そのためにかなりリスク分散してますからね。
さてどうなることやら。
ただ医療機器の部門自体が、会社の締める割合として大きくないんですよね。
全体で見れば、医薬品っていうとジョンソン・アンド・ジョンソンがわりと圧倒的に1位なわけですが、CTのような医療機器1位のGE(ゼネラルエレクトリック)ですら、全体の1%もなかったように記憶しております。
キャノンは数%、富士フィルムもそのレベルだったと思ってます(きちんと調べてないので違う可能性大)
で、なんでそんなのに金をかけてるかというと自分の会社のブランド価値を高めるためではないかと、思っております。
医療機器というとなんかすげーって感じしますもんね。
つまり会社のブランド価値をどこまで高められるかって話かなって思ってます。
ただ医療機器の入れ替えシーズンは年度末か、年末が多いのでそれまでの売上は期待しないほうがいい事は確か。
キャノンの株を買うなら年末か年度末が良さそうな感じ。
多分。
3/19 お昼くらいに 微妙に追記したり修正しました。